03/25/2014

レジェンドからの預かり物




今シーズン、京セラD2階にオープンした
「Bs SQUARE」。


その一角には、阪急ブレーブスの日本
シリーズ3連覇をテーマにした記念品の
数々が展示してあります。






阪急の日本シリーズ3連覇は1975年から
1977年の3年間。


ルーキー山口高志投手が快刀乱麻の
ピッチングを見せ、初めての日本一に
輝いた1975年。

第7戦までもつれた白熱のシリーズで
悲願の打倒巨人を果たした1976年。

山田久志投手の投打に渡る大活躍、
そして、簑田選手のホームへの好走塁が
記憶に残る1977年。

まさに阪急の黄金時代でした。





さて、その3年間、合計18試合の熱戦が
繰り広げられた日本シリーズ。

その中で一番印象に残るゲームはどれか、
と尋ねられれば、ボクは迷わず1976年
11月2日、後楽園球場で行われたその年の
シリーズ第7戦に一票を投じます。







1976年、史上初の前後期制覇でリーグ
連覇を果たした阪急は、シーズン中の
勢いをそのままに、日本シリーズが
始まるといきなりの3連勝。

あっという間に2年連続の日本一に
王手をかけます。


一方、前年のリーグ最下位から一気に
王座に返り咲くというドラマを演じた
長嶋監督率いる巨人。

その真価は第4戦から発揮されます。

第4戦、第5戦を連勝すると、第6戦では
7点差をひっくり返す大逆転勝ち。

「やっぱり巨人には勝てないのか・・・」

流れは大きく巨人に傾いたまま、
シリーズは最終の第7戦を迎えました。







1976年11月2日。

舞台は巨人の本拠地、後楽園球場。

観衆の数、45,967人。

ぎっしりと詰まったスタンドは
ほとんどが巨人ファンでした。


地響きのようにさえ聞こえる巨人への
声援が球場を支配する中、阪急の先発
マウンドに立ったのは足立光宏投手。


足立投手は身長173cmのサブマリン投手
です。

そのとき36歳。プロ18年目の大ベテラン
でした。


もう少し足立投手のことを書きます。

足立投手は1959年に阪急に入団。

1962年5月24日の南海戦で1試合17奪三振
という当時の日本記録を樹立。

1967年のシーズンでは20勝10敗防御率
1.75の好成績でリーグMVPを獲得して
います。

特筆すべきは大舞台での強さ。

巨人のV9時代、その高い壁にことごとく
はね返された阪急にあって、チームが
挙げたシリーズ8勝のうち、実に5勝が
足立投手によるものでした。


3勝3敗で迎えた勝負を決める第7戦。

実にその舞台に相応しい投手でした。







試合は3回に阪急が福本選手の二塁打で
先制。巨人が5回に高田選手の本塁打で
追いつくという緊迫した展開。

そして、6回裏に大きな山場を迎えます。

一死2、3塁から守備の乱れにより、
阪急は1点のリードを許します。

王選手を敬遠し、なおも一死満塁の
ピンチ。

打席には淡口選手が入ります。

一気に試合の行方が、そしてシリーズの
帰趨が決しかねないシーンに、スタンドを
埋め尽くす巨人ファンのボルテージは
最高潮に達しました。

球場を渦巻くように響き渡る大声援。

この場面で足立投手は表情をかえることも
なく、口の中でこうつぶやいていたと
いいます。

「騒げ、騒げ、もっと騒げ」


平然と投じた一球は、淡口選手の凡打を
誘います。

投ゴロとなったその打球は、本塁、一塁と
渡るダブルプレー。


巨人に微笑もうとした勝利の女神は、
足立投手の度胸満点のピッチングにより
翻意を促されました。

7回には森本選手がレフトへ起死回生の
逆転ツーラン。

8回には福本選手がリードを2点差に
広げる価千金のソロホーマー。

試合は4対2で阪急が勝利し、2年連続の
日本一となりました。







その阪急の最終回のマウンドには、
当然のように足立投手の姿があり
ました。


最後の打者を三振に打ち取った瞬間、
それまで一切の表情を変えなかった
足立投手の顔に満面の笑みが浮かび、
大喜びで中沢捕手と抱き合った姿を
ボクははっきりと覚えています。



時代はそれから進むこと38年と4ヶ月。

先々週の水曜日、球団事務所に一本の
電話が入りました。

電話の主は足立投手でした。

現役引退後、コーチを経て、スカウト
として活躍されていた足立さん。

その電話は当時を知る古株職員である
ボクのところに、当然のように転送されて
きました。

「足立さん、ボクのこと覚えてますか?」

「おう、覚えとうよ」

そんな会話で始まったその電話、用件は
というと、

「家にあっても押入れにしまってるだけ
やからなぁ・・・」

「Bs SQUARE」のオープンを知った
足立さんからのありがたいお申し出
でした。

「いらんようになったら返してやー」



週末、すぐさま足立さんのご自宅近く
までお預かりにうかがいました。


そのときの写真です。






足立さんが手にする額の中には、
あの日、足立投手と中沢捕手が歓喜
した姿がしっかりと収められています。


足立さんは現在74歳。

実年齢より相当若く見えました。

それもそのはず、足立さんは現在も
大学のコーチとして、若い投手に
ピッチングの極意を教えてらっしゃい
ます。



足立さんからお預かりしたのは、
1976年の日本シリーズで獲得した
「優秀投手賞」に対して、新聞社
から贈られた記念の額。





「Bs SQUARE」で、近日、公開予定
です。

どうぞお楽しみに♪